INTERVIEW #

30

エシカルな暮らしを日常に

土田亜美さん(Ethinue)

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2024.03.20 UP

「エシカル」という言葉を、聞いたことはありますか?エシカルとは、「人や社会、地球環境、地域に配慮した考え方や行動」という意味をもち、近年では地域や社会に配慮した商品やサービスを消費する「エシカル消費」が普及し始めています。2023年にチャレンジショップ「break」にオープンした「Ethinue」は、氷見市初のエシカルショップ専門店。店内には「気軽に買い物を楽しむことから、社会にとって良いアクションにつなげていきたい」という店主の土田さんの思いが感じられる商品が所狭しと並んでいます。海岸清掃のボランティアを主宰しながら、地方に新たな価値観や文化を根付かせようと模索する姿を取材しました。

取材・文 / 一川有希

ー土田さんは、海岸清掃を行うボランティア団体を主宰されていますよね。ボランティアを始めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。

昔から「起業したい」という思いがあり、結婚を機に氷見へ引っ越しをしてきたタイミングで、放置竹林を使った竹歯ブラシの商品化を目指していました。ただ、当時の自分にはスキルも、お金も、人脈も、知識もなく、すぐに事業が行き詰まってしまいました。

ちょうどそんな時に島尾海岸の砂浜にごみがたくさん落ちているのを見かけて、不思議とごみを拾いたくなったんです。キラキラしているはずの海がごみだらけになっているのと、当時の自分が重なったように思えたのかもしれません。将来やりたかったことの一つに社会貢献があり、何も持っていない私でもごみを拾うことなら今すぐ始められると思いました。



ー実際に海岸清掃を始めてみて、いかがでしたか。

最初は1人でごみを拾うことに恥ずかしさを感じましたが、やっているとどんどん夢中になっていきました。そこから徐々に一緒に活動してくれる仲間が増え、「海を守りたい」という熱い思いを持った人たちと繋がり、共に活動できたことが嬉しかったです。義務になってしまうと続かないので、無理なく楽しく活動を継続していくことを大切にしています。活動を通じて、自然と社会にとって良いアクションをとれる人が増えていってほしいですね。


ーもともと環境問題や社会問題などに関心があったのでしょうか。

父が配管工の仕事をしていたので、小さい頃から「家の排水は下水道を通り、浄化槽できれいになって海に戻っていく」という循環の流れを知っていました。大事な循環システムの一端を父が担っていることを誇りに思っていましたし、父の姿を見ていたからこそ、「汚いものをきれいにする」という感覚が自ずと身についていたのかもしれません。



ーボランティアから起業の道に進んだきっかけは何だったのでしょうか。

小学生の時から「父の会社は、私が継ぐ」と冗談で言っていたので、小さい頃から自分で事業をすることに憧れがあったのだと思います。ただ、社会に出て働いてみて、失敗もたくさんしましたし、様々なことを経験していく中で「私なんかにできるわけない」という気持ちになっていました。

なかなか動き出せていなかったときに、出会ったある人に「できないと思っていたら、いつまでたっても実現できない」と強く言われて、言い争いになったことがありました。自分の行動できていない現状が悔しくて、結果としてその言葉がきっかけとなり、起業に挑戦することを決めました。今となっては率直に意見をぶつけてもらえたことがありがたかったですし、氷見で出会った方はみなポジティブでアグレッシブな方が多いと感じています。起業に対する行政のサポートも手厚いですし、「エシカルショップを開きたい」と相談した際にも親身になってアドバイスをくれたり、応援してくれたりする人が多かったです。氷見ならば、私も一歩踏み出せるのではないかと思いました。


ーオープンした「Ethinue」では、どのような商品を販売しているのですか?

無添加、オーガニック、フェアトレード、アップサイクルなど、地球や社会に配慮したエシカル雑貨などを、計40種類ほど店頭に並べています。

例えば、天然木と天然毛から作られた日本製の「自然に還る天然素材の歯ブラシ」。馬や豚の毛が使われていますが、副産物の毛を使用しているため、わざわざ動物を狩ることもないですし、天然毛は消耗が少ないため、最低でも半年間は使い続けることができます。

歯ブラシに天然毛を植え付ける植毛機はすでに製造が中止されているため、現存して使えるものが少なく、日本で5人もいないといわれているベテラン職人が、一本一本丁寧に植毛しています。まさに、日本のものづくりの歴史や価値を感じられる商品です。

商品の選定基準が明確にあるわけではないですが、取り扱っている商品は全て「エシカルでニューな商品だ」と、私が感じたもの。新商品だから選ぶというわけではなく、私の中で新しい発想であると感じられたり、若さや勢いを感じられたりした商品を、自分の知識の網にかけ、「間違いなくおすすめできる商品だ」と思えたものだけをセレクトするようにしています。 



ー地方では「エシカル消費」や「サステナブル」などの価値観が、まだまだ根付いていない側面もあるかと思います。こういった文化や価値観を広めていこうとしている中で、課題や障害に感じられている部分はありますか?

エシカルというくくりで見れば、氷見はとてもポテンシャルが高いと感じています。約400年以上の歴史がある「定置網漁業」は、資源保護や生物多様性に寄与する持続可能な漁業ですし、自然栽培の農家やオーガニック給食の推進に向けて活動している方もいます。

ただ、「社会にとって大切なのかもしれないけど、よく分からない。自分とは関係ない」と、少し敬遠されてしまう方もいると思います。お店に入っただけで、どんな思いで商品をセレクトしているのか、社会ではどんなことが問題になっていて、そのためにこの商品はどう貢献しているのかということを、もっと伝えていかなければいけないと感じています。「商品を買ったはいいものの、何に価値があるのか分からない」という状態にならないように、しっかりと店頭で魅力を伝えていく必要があると思います。

ー今後「Ethinue」をどのようなお店にしていきたいですか?

店舗を拡大させていくのであれば、レストラン・カフェを併設した雑貨店をやりたいと思っています。氷見の食材を使って、健康で体に良い食事を提供するテイクアウト店に興味がありますね。私の夢は、自分のお店を持つことがゴールだったわけではなく、あくまで自分のアイデアを形にして、世の中を面白くしたり、人を幸せにしたりできる経営者になることです。暮らしの多様な場面において、エシカルでおしゃれな暮らしを提案する。そんな経営者になっていきたいです。

Ethinue(エシニュー)

住所 / 富山県氷見市中央町8-28
定休日 / 火土
駐車場 / 近くに無料駐車場あり

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