INTERVIEW #

24

失敗、改善から生まれる新たな挑戦

池田匠さん(㈱匠屋)

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2023.01.13 UP

島尾海水浴場から徒歩90秒の好立地に佇む旅館「天然温泉 浜辺の宿 あさひや」。もともと料理人を目指していた池田さんが、事業承継という形で当時の民宿を引き継ぎオープンさせた。コロナ禍でも一棟貸しの離れをオープンするなど事業を拡大し、2022年6月にひみ番屋街内にプリン専門店「ひみぷりん」をオープン。多いときには1日約1,300個を売り上げ、地元フルーツを使ったオリジナルプリンの開発も積極的に行っている。旅館業にスイーツ専門店と、氷見のまちで新たに挑戦を続けている池田さんに話を伺った。

取材・文 / 一川有希

池田さんはもともと料理店の創業を目指されていたんですよね。どういったきっかけで「あさひや」をはじめることになったんですか?

池田:23歳の時に「30歳になったらお店を出そう」と決めて、好きだった料理の世界へ飛び込みました。独立ありきだったので、あえて個人が経営するような小さな割烹料理店を選び、修行をはじめました。

いよいよお店を出す段階になった時に、なかなかいい物件が見つからなくて…。氷見商工会議所に相談していたのですが、「辞められる旅館があるから、旅館でもいいなら空くよ」と教えていただきました。料理店を出すつもりだったから「旅館!」と驚きましたが、見に行ってみるときれいな形で残っていたので、夢が膨らんだというか、これはやってみたいなという気持ちになりました。ちょうど30歳の時に、旅館の「事業承継」という形で創業しました。


想定外だった旅館の業務は大変だったんじゃないですか?

池田:めちゃくちゃ大変でした。正直死ぬかと思いましたね。前のオーナーの方に1ヶ月ほど引き継ぎしてもらいましたが、料理の経験はあっても宿の経営はやったことがないものばかりでした。はじめは布団の上げ下げや掃除も、全部自分でやろうとしていました。さすがに寝る時間もなくなり限界がきて、従業員の手を借り、今に至ります。



当初とは違う「事業承継型」の創業をしてみて、良かった点はありますか?

池田:自分で一から作っていくと結構な資金が必要になりますよね。当時はやっぱり資金がなかったですし、まるまる居抜きで改装せずにスタートすることができたのは、とてもはじめやすかったと思います。当時も第三者への事業承継はあまり多くなかったと思いますが、創業者にとっても、いいものだと感じています。

実際にはじめてみて苦労したことや、失敗したことはありますか?

池田:苦労や失敗したことはたくさんありますよ。もともとの宿は団体客を中心としていたのですが、顧客を引き継いだこともあって、はじめた頃は団体のお客様も多く来られていました。それに甘えていたのか、宴会やカラオケをする団体客の隣にご夫婦の予約をいれてしまって…。「カラオケがうるさい!」と、めちゃくちゃ怒られました(笑)。そこで自分の甘さに気付きましたね。とにかくお客様の声を聞いて、改善できるところはどんどん改善していきました。

自分のなかで目標を決めないとうまくいかないと思ったので、まずは「楽天トラベルアワード」の受賞を目指しました。目標としていた県外宿の口コミをみて、「この宿はここをこうしているのか」ということをひたすら研究して取り入れていきました。2018年に受賞してから、いまも3年連続で楽天トラベルアワードを受賞しています。

楽天トラベルアワード受賞

コロナ禍となり、氷見の観光業・宿泊業の皆さんも大きく影響を受けたと思います。池田さんはコロナをどのように受け止めていましたか?

池田:僕的には、「コロナはチャンス」と思っていましたね。お客様がいないのであれば、コロナ前にできなかったことに取り組めるチャンスだと考えて、宿の改装・設備投資を行いました。トイレを全部屋に付け、大浴場2つ・貸切風呂3つだったお風呂をすべて貸切風呂にしました。それに伴い、お部屋から貸切風呂の状態をチェックできるよう専用アプリも導入しています。コロナをきっかけに、もともとやりたいと思っていた一棟貸しの離れの建設・オープンも行いました。

変化がない宿だと常連のお客様も飽きてくると思うんです。いまでは以前来られたお客様に「ここ変わったね!」と言われるのが、ささやかな楽しみになっています。コロナがはじまって3ヶ月ほどは赤字でしたが、そこからはずっと右肩上がりできています。

おなじくコロナ禍で、プリン専門店「ひみぷりん」をオープンされていますよね。どんな思いで出店を決められたのですか?
池田:プリンって、老若男女に愛されているスイーツだと思いませんか?ご当地プリンは全国各地にいろいろありますけど、そのほとんどが売れていると聞いています。プリンの監修をしていただいている所シェフ(※1)の講演を聞いたときに「番屋街に新しい観光スイーツを販売するお店があったら面白い。確実にいける」と感じました。もともとあさひやでも、お客様におもてなしのプリンを出していたんです。それも出店のきっかけにつながっていると思います。


※1:所浩史シェフ(株式会社菓子道代表取締役、「プルシック」オーナーシェフ)




あさひやの設備投資やひみぷりんの出店など、かなり思い切った決断だったと思います。不安とかはなかったですか?

池田:あまりなかったですね。僕は戦略性がまったくないんですよ。やってみたいと思ったらやるタイプなんです。最初から緻密な計算をせずに、とりあえず飛びこんでみて失敗してから直せばいいかなと思っています。銀行が貸してくれなかったらやめますけど、ありがたいことに貸していただけたので「銀行が大丈夫っていうなら大丈夫だろう」と、当時も思っていました。

いま思えば学生の頃から、テストは失敗してからのほうが得意でした。はじめからいい点数は取れないけど、間違えたところはちゃんと直したいタイプ。間違えたところを2回間違えることが嫌いでした。そこは子どもの頃から変わらず「失敗したら改善すればいい」という気持ちでしたね。


旅館業にスイーツ専門店と、まったく異なる業種を展開されていますが、池田さんが思う氷見の魅力や氷見でお店をはじめるうえで魅力に感じているものはありますか?

池田:氷見の場合、観光客のお客様が多いというところですかね。どんなお店をやるかで変わってくるとは思いますが、人口減少が進むなかで地元の方だけを対象にするのではなく、市外のお客様を引っ張ってくることが大切だと感じています。あくまで僕の意見ですけど、氷見で商売するときは、観光がひとつのテーマだと思います。




氷見のような地方で仕事をするときに、必要だと思うマインドや大事にされていることはありますか?

池田:僕は「自分の商売が一隅を照らせば、それが周りに波及していく」と考えています。宿についても「氷見に来たからあさひやに行こう」ではなく、「あさひやに行きたい」と思ってもらいたい。そこはひみぷりんも同じですね。数ある候補のなかから目的地として選ばれることで、周りの観光地やほかのお店にも足を運んでもらえるきっかけを作ることができると思っています。

あとは、思ったらとりあえずやってみるということですね。すぐ取り組んで、うまくいかなかったら改善していけばいい。そうやってまた新しいことに挑戦していきたいと思います。

天然温泉 浜辺の宿 あさひや

住所 / 富山県氷見市島尾2195
営業時間 /
定休日 /
TEL / 0766-91-2045
駐車場 / 15台

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