みんながわくわくする氷見に。
坂本:まずは皆さんから見えている氷見、この街で皆さんが今したいことを聞いてみたいです。こういうものがあったら良い、こういうことやってみたいとかあります?
松木:氷見って『2040年消滅可能都市』に指定されているんです。2040年になると行政機能を保持できない可能性があると言われているんですね。僕は最初それを聞いた時にすごく腹が立って、何か氷見に対してできることはないかと考え、『イミグレ』を始めるに至りました。30歳前後の世代で、氷見はおもしろい、良い街だと、みんながいきいきとしている機運の情勢を生み出すことが大切なことかなと思います。
山本:僕は、毎月のように新作ビールを作っているんですが、こういうことが近所で話題になるような雰囲気にならないかなと思っています。身近なおもしろいニュースにわくわくしたり、それをみんなで楽しんでいく雰囲気になればと思いますが、まだまだ皆さんに届いていない感じがします。
大石:以前は、氷見には娯楽が少ないと思っていました。信用金庫は、ローカルに根ざしていて社員もみんな地元のことをよく知っています。僕も氷見伏木信用金庫に勤めるようになって、氷見市のおもしろい場所を知ることになったんですが、県外の友人をそのようなところに連れていくととても喜んでくれるんですよ。氷見に住んでいない人の目線ってとても新鮮で、そういう外部からの視点もこれからは大切かなと思います。
個を生み出す。個を鍛える。
坂本:若い世代の方々が、いきいきと色んなことに挑戦できる街にしたいですよね。そういう街を目指した時に、今の氷見が抱える課題ってなんだと思いますか?
松木:グランドデザインみたいなものを作って、それを元に街づくりをしていくのは現状の氷見では難しいと思います。まずは1店舗からでも良いので、全国からお客さんがくるような店(スポット)を作ることが必要なのではないかと思います。強い個を作ることが街づくりに必要ではないかと。
山本:僕も個の力のレベルアップは必要だと感じますね。例えば『ブルーミン』のビールには、氷見でしか飲めないというビールという付加価値がある。しかしそこだけに甘えてはいけない思っていて、冬の間は研修に行って外の世界を勉強したり、コンテストへの出品も行なっています。
大石:いろいろな店舗が集まり、ひとつの会社を作るワークシェアリングに注目しています。個を鍛えることも大切ですが、まずは個を生み出すことも必要で、大きな母体がひとつあることでチャレンジしやすい体勢が整い、個を生み出しやすい環境に繋がるのではないかと思います。
氷見には応援してくれる人がたくさんいる。
坂本:街が提供している価値の上で、ビジネスが成り立つこともあると思うのですが、氷見においてはビジネスをする上でどんな利点・機能がありますか?
山本:氷見では、〇〇屋さんみたいなわかりやすい種別のお店は始めやすいのではないかと思います。僕も開店前は、氷見でクラフトビールを作るって受け入れられるのか不安だったのですが、周りからのサポートもあり、意外とすんなり始められました。
松木:氷見は応援してくれる人が多いですよね。思いがある人を応援するような土壌があって、それが氷見の良いところだと思います。僕の知る限り、氷見で開業するにあたりクラウドファンディングを使った人はほとんど成功しているんじゃないかな。
大石:これからの氷見は、物流の観点から見ても大きな企業が誘致されてきたり、新しくそれが出来ることは難しいと思います。ですので、これからはビジネスにおいても個の力が重要だと思っていて、それらが集まり商店街を成すような昔のような姿に戻っていくと良いなと思っています。そして氷見市はベッドタウンとしては優秀だと思っていて、商店街が充実することによってさらに生活しやすい街になっていけばと思います。
結局地元。
坂本:みなさん、なんらかの理由があって氷見で生活されてると思うのですが、その理由を聞かせてもらって良いですか?
山本:僕は氷見で生まれたので、ここで生活するのはごく自然なことだと思っています。やはり地元の方にブルーミンのビールを飲んでもらって、我が街のビールとして自慢されるような存在になれたらと思っているのですが、残念ながら氷見は車社会なんです(笑)。気軽にお店でビールを飲めないので、自分で持参した水筒にビールを入れて持ち帰るというビールのテイクアウト販売に取り組んでいます。これは一例ですが、氷見でビール作りを続けるためには何をするべきかという視点で考えていますね。
大井:僕は氷見の獅子舞や祭りが好きなんです。氷見の人の温かさが好きで、氷見にいながら働ける場所を探し、氷見伏木信用金庫に勤めることになりました。氷見市役所に出向したことがきっかけで、本来の金融機関の目的である、人と人を繋ぐことができたらと思うようになりました。
松木:単純に氷見が好き。その理屈を探そうと何度もよく考えたのですがなかなか出てこないんですよね(笑)。
個々のストーリーが積み重なって街になる。
坂本:最後に、みなさんの人生にロールモデルのようなものがあるとしたらそれは何ですか?
山本:お店を始める時に、関東や関西など県外の人も支援してくれたんです。その方達にも『ブルーミン』のビールを届けたいなと思っています。そのためには製造量を増やして、卸売をする必要があるのですが、そのような展望を持ちつつ、ビールでこどもを大学まで行かせたいですね(笑)。
松木:こうなりたくないというのは色々あるんです。不平不満を並べて愚痴ばかり言っているような大人にはなりたくないし、口だけで実行に移さないような大人にもなりたくない。そして現在の自分が変えられる領域、僕だったら『イミグレ』の中のことなどなのですが、自分が手におえる範囲で状況を良くしていきたいと常に思っています。
大井:僕はパソコンやツーリング、爬虫類など趣味が多いんですが、普段の信用金庫の仕事とは別に、それらのスキルや経験を活かして何か地域に還元できないかなと思っています。それらを使って色々な人を繋いでいきたいです。
坂本:今日のトークを通して、個々のストーリーが積み重なって街はできるのだなと感じました。これらのストーリーを表面化させていくことがこれからの街づくりには大切かと思っています。今日はありがとうございました。
約1時間30分ほどのトークイベントだったが、氷見にはまだまだ広く伝わっていない魅力がたくさんあると感じた。それぞれがそれぞれのやりたいことや思いを持った上で、氷見をもっと良くしていきたいという気持ちも持っている。今回のトークでは全体を通して「個」という言葉がキーワードとして何度も登場した。これからの氷見には、「個」が臆することなくチャレンジし、活躍できるような雰囲気と、それらを受け止める大きな器が必要なのかもしれない。